男性不妊について男性不妊について

男性不妊症の治療

男性不妊症です。治るのでしょうか? どんな治療がありますか?

一般

男性不妊の治療だけで大丈夫ですか

妊娠において女性の年齢は重要です。自然妊娠率は25歳の女性に比べると、35歳で50%、38歳で25%、40歳以上で5%以下になってしまいます。男性不妊治療だけでなく、奥さまの年齢が若くとも(特に35歳以上は)婦人科治療も並行して行うことをお勧めします。

奥さんが35歳以上でも、男性も治療した方がよいでしょうか

精液所見や精子のDNA損傷など、精子の質が改善すると自然妊娠、人工授精、体外受精、顕微授精の成績が改善します。奥さまの年齢が35歳以上でも、男性不妊治療も並行して行うことをお勧めします。

精子数や精子運動率を増加させる薬

残念ながら厚生労働省が認めた男性不妊治療薬はありません。しかしながら男性不妊診療医は経験に基づいた下記のような薬を処方します。最低3カ月間、服用して下さい。

処方薬;ビタミンB12,ビタミンC, ビタミンE, カルナクリン、CoQ10、L−カルチニン

漢方薬(補中益気湯、八味地横丸、牛車腎気丸、セルニトン)

ホルモン剤(クロミフェン)

精索静脈瘤

精索静脈瘤

精巣やその上の精索部に静脈瘤(静脈の拡張)が認められ、これを精索静脈瘤と言います。私たちの体の仕組みから多くは左側に認めます。

精索静脈瘤の頻度

精索静脈瘤は、一般男性の15%に認められ、男性不妊症患者の40%以上に認められます。

精索静脈瘤があると、なぜ精子が減ったり精巣が小さくなるのですか

陰嚢内に収まっている精巣は体温より2度ほど低い温度環境でよく機能します。精巣の周りに精索静脈瘤ができると精巣温度の上昇や血流障害をきたし精液所見の悪化や精巣萎縮になります。

精索静脈瘤と男性不妊

WHO(世界保健機関)は、精索静脈瘤が精巣機能の悪化や男性不妊症に、明らかに関連していると結論しています。また、続発性の男性不妊症(二人目不妊)の80%の原因といわれています。精索静脈瘤は、精液所見の悪化やライディッヒ細胞(男性ホルモンをつくる細胞)機能の低下と関連しています。精索静脈瘤は、現在、外科的に治療可能な男性不妊の原因として認められ、その手術は、男性不妊症に対して最も一般的に行われている治療です。

精索静脈瘤の手術適応

精索静脈瘤が触知される、または触知が疑われ超音波検査で確認でき、精液所見が悪い場合。あるいは、精巣障害は進行性なので予防的に行う場合もあります。手術による効果が現れるのには3ヵ月ほど必要ですので、奥様の年齢も含めて時間的余裕があるのかという点も手術を行うかどうかにおいて重要になります。さらに陰嚢の痛みや違和感がある場合も手術が考慮されます。思春期男性では、片側の精巣サイズが小さくなっている場合には手術が行われます。また精液所見が正常で反復して生殖補助医療を行っても妊娠出産に至らない方も相談のうえ手術を行います。

精索静脈瘤の手術方法

精巣静脈高位結紮術、腹腔鏡下精巣静脈結紮術、顕微鏡下精巣静脈低位結紮術などがあります。麻酔は全身麻酔で入院して行いますが、顕微鏡下精巣静瘤低位結紮術を局所麻酔で日帰り手術で行う施設もあります。顕微鏡下精巣静脈低位結紮術を行っていますが、合併症(精巣水瘤など)や再発率が最も低いですが、術者の熟練が必要です。

精索静脈瘤手術の効果

精液所見の改善は51%〜78%で改善しています。自然妊娠率は24%〜53%です。Goldsteinらの報告によると女性不妊要因を除くと自然妊娠率は1年目で43%、2年目で69%です。

精索静脈瘤の大きさと手術成績

精索静脈瘤の手術成績は、ある程度、手術前の精索静脈瘤の大きさによります。

精索静脈瘤が大きいほど精液所見が悪化している傾向があります。そして、精索静脈瘤の手術による精液所見の変化は、小さい精索静脈瘤より大きい精索静脈瘤 の方が、明らかに高い改善を示します。触知可能な大きい静脈瘤(静脈径3mm以上)を手術適応として良好な成績が得られています。

精索静脈瘤手術は、人工授精・体外受精・顕微授精の成績を上昇させます

静脈瘤手術をして、精液所見の改善や自然妊娠率の改善が認められます。しかし、自然妊娠できない場合もありま す。そこで人工授精、体外受精、顕微授精に精索静脈瘤の手術が貢献できるかが注目されています。Ziniらは、精索静脈瘤手術を行うと精子のDNA損傷が少なくなったと報告しています。Sandroらは、精索静脈瘤手術によって、総運動精子数は670万/mlから1540万/mlへ有意に改善し、顕微授精(ICSI)による妊娠の可能性が1.82 倍、 ICSIによる出産の可能性は1.87倍と高くなり、ICSIによる流産の可能性は 0.433倍と低くなったと報告しています。

無精子症

無精子症

精巣内で精子を正常に造っているが、精子が射出精液にいないものを閉塞性無精子症、FSH(卵胞刺激ホルモン)やLH(黄体形成ホルモン)が低値で、男性ホルモン低下や無精子症があるものを低ゴナドトロピン性性腺機能低下症といいます。

FSHが高値で、精巣内で精子を作る能力が低下または消失し、精子が射出精液にないのを非閉塞性無精子症といいます。

閉塞性無精子症

精巣サイズが正常大でかつホルモン検査(FSH, LH,テストステロン)が正常範囲内にある方では97%くらいの確率で閉塞性無精子症と診断できます。しかし数%の方が非閉塞性無精子症が含まれます。最終的な診断法は精巣への吸引細胞針もしくはTESEで精子が採取出来た場合です。採取出来た精子は凍結保存が可能です。

閉塞性無精子症の治療

精路閉塞(パイプカット、鼡径ヘルニア手術、精巣上体炎、射精管閉塞など)に対しては、入院して全身麻酔で顕微鏡下精路再建術または射精管切開術を行います。手術をしても精子が出現しない場合も考えられますので、精巣内精子の凍結保存も念のため行います。

診察や超音波検査で精管欠損と診断された場合は、精路再建ができないので精巣内精子採取術を行い顕微授精を行います。また、精巣の大きさが正常大で、FSH(卵胞刺激ホルモン)が正常で染色体異常がない場合は、精巣内で精子を作っている可能性が高いので精巣内精子採取術を行い顕微授精を行います。

非閉塞性無精子症の治療

FSH(卵胞刺激ホルモン)高値、染色体異常、精巣が小さい、Y染色体微小欠失(AZF)がない例またはAZFc欠失例やTESE無効の場合は、顕微鏡下精巣内精子採取術(MicroTESE)を行います。精子を採取できる確率は約30−40% です。AZF領域微小欠失検査結果でAZFa欠失、AZFb欠失、AZFb+c欠失、Y染色体長腕欠失などでは、MicroTESEを行っても精子を回収できないので手術を勧めません。精子が採取できなかった場合は、AID(他人の精子による人工授精)を希望者のみ検討します。

Micro TESEを行う訳

前述の通り、無精子症には、精子はつくられているけれども精子の通り道(精路)に問題があって精液中に精子が出てこない「閉塞性無精子症」と、精路には問題がないが精子をつくる働きに問題がある「非閉塞性無精子症」があります。

非閉塞性無精子症の場合は、TESE(精巣内精子回収法)よりも、MicroTESE(顕微鏡下精巣内精子回収法)のほうが精子を採取できる確率が高いこと、 また、取ってくる精巣組織の量が少ないため、精巣に対するダメージが小さくてすむので術後の男性ホルモンの低下などの副作用が少ないです。これらの理由から、MicroTESEがふさわしい方法になります。

最も大きなメリットは、手術用顕微鏡で注意深く血管を避けながら手術をするので、余分な精巣組織の損傷 が最小限で済むという点です。つまり、MicroTESEは精巣にやさしい手術法であるということです。

後期精子細胞

後期精子細胞というものは解剖学的には存在しません。円形精子細胞から成熟精子になるまでの、精子の尾部が伸びてくる過程の細胞を指していると思われますので、これはelongating spermatidと正式には呼ばれています。TESE(精巣内精子採取術)を行なった場合にelongating spermatidの段階で精子成熟が停止することは極めてまれで、多くの場合は成熟精子(正常な精子)が存在します。ですから、elongating spermatidが存在する場合には、同時に存在する成熟精子を採取して顕微授精を行なう事が可能になります。

ED・射精障害

膣内射精障害

文字通りに女性の膣のなかで射精できない状況で、床にこすりつけるなど不適切なマスターベーションを続けてきたことが原因であるが多いです。

当然ですが、不妊の原因になります。

逆行性射精の治療

射精反射はあるが精液が射出されず膀胱内に射精する状態を逆行性射精といい、生まれつきのこともありますが、糖尿病や腹部・直腸の手術後に多くみられます。症状はマスターベーションしても精液がでないもしくは精液量が極めて少ないことを訴えます。その診断はマスターベーション後の尿中に精子が混入していることです。

治療は、薬物療法を行い、それが無効の場合には、TESE(精巣内精子採取術)−ICSI(顕微授精)または膀胱内精子回収−ICSIを行います。

ED治療薬の精子への影響

ED治療薬が、精子や精巣に与える影響はなく妊娠し子供にも影響はありません。多くの夫婦がED治療薬を使用し妊娠しています。また流産などの確率は普通と変わりません。